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養子縁組「前」に生まれた子どもに新たな親族関係はない
神奈川県の小さな町に、C子とその子どもたち、A美とB郎が住んでいた。
C子は若い頃に父親を亡くし、母親と共に困難な生活を送っていたが、母親の姉であるD代の支援を受けることになった。
D代は、C子がまだ小さかった頃から温かく手を差し伸べてくれた存在であり、その関係は親子以上に深い絆を感じさせるものだった。時が経ち、C子は成人し、結婚して子どもを持つが、生活が困窮していた。そんなC子に対して、D代はまたもや助け舟を出した。
D代がC子を養子として迎えることとなった。養子縁組によって、C子はD代の法的な娘となり、これからはD代と共に暮らし、彼女の遺産を継ぐ立場となる。
C子が養子縁組をした後、A美とB郎は、母親C子に育てられながら、それぞれ成長していった。
A美は優しく、家族を思う性格であり、B郎は冷静で理知的な青年だった。家族全員が一緒に過ごす日々は穏やかで、何不自由ないように見えた。
しかし、時が経ち、家族を取り巻く環境は変化し始める。
ある日、突然の知らせがA美とB郎を驚かせた。
C子が倒れたという知らせだった。すぐに病院に駆けつけたA美とB郎は、母親が帰らぬ人となったことを知らされる。悲しみに暮れる二人は、母親の遺産を相続するための準備を始めることとなる。
その後、A美とB郎は母親C子の遺産を引き継ぐこととなったが、その背後にある複雑な法的問題に気づくことになる。
C子が養子縁組をした相手、D代はすでに亡くなっていた。
そして、D代には実子であるE男という息子がいたが、E男は一人で暮らしていた。
E男が一人で暮らしていた家を管理し、その土地や建物がE男名義であることを知ったA美とB郎は、E男が相続人不在のまま亡くなったことで、その遺産を受け継ぐことができるのではないかと考えた。しかし、母親がD代の養子であったことにより、その法的関係がどのように相続に影響するのかは不明確だった。
養子縁組前の子どもは代襲相続の対象外か
E男が亡くなった後、A美とB郎は、E男名義の土地と建物について遺産相続を申し立てることにした。二人は、母親C子がD代の養子であり、その養子縁組によって法律上はD代の子としての権利を持っていると考え、その遺産を相続できると信じていた。
しかし、法務局で登記申請を行ったところ、登記官から申請が却下されるという事態が発生する。
登記官は、A美とB郎がE男の相続人として申請する権限がないとして、却下処分を下したのである。この決定にA美とB郎は驚き、そして困惑した。
法的にどうして自分たちが相続できないのか、納得できる説明を求めて、訴訟を起こすことにした。
A美とB郎は、登記官の処分が不当であるとして、国を相手に訴訟を起こす。
訴訟では、A美とB郎がD代の養子縁組を通じてE男の相続権を得るべきであると主張した。
しかし、法的な問題は非常に複雑であり、二人の主張が通るかどうかは不透明だった。
代襲相続の範囲が広くなりすぎないため
訴訟は長期にわたり、何度も審理が繰り返され、ついに地裁での判決が下されることとなる。
地裁は、A美とB郎の主張を認め、登記官の却下処分を違法であるとして、原告の請求を認容した。
しかし、この判決に納得できない国は、すぐに上告し、事態は最高裁にまで持ち込まれることとなった。
最高裁では、代襲相続に関する民法第889条第2項の解釈が問題となる。
特に、A美とB郎が主張する「養子縁組を通じて相続権を持つべきである」という点が焦点となった。最高裁は、この問題に慎重に向き合い、最終的に以下のような判断を下す。
最高裁は、「被相続人の兄弟姉妹の共通する親の直系卑属でない者は、被相続人の兄弟姉妹を代襲して相続人となることはできない」と判示した。
この判決により、A美とB郎の主張は退けられ、彼らは相続権を持たないとされることとなった。
令和5年(行ヒ)第165号 不動産登記申請却下処分取消請求事件
令和6年11月12日 第三小法廷判決
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/490/093490_hanrei.pdf
日経新聞記事
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE0634Q0W4A101C2000000/